ネットショップを開業する場合、販売する商品や、サービス等によっては許可や届出、免許が必要な場合があります。
また電子商取引に関連する法律にも注意して対応する必要があります。
電子商取引(EC:e-commerceまたは、electronic commerce)とは、コンピュータネットワーク上で電子的情報通信により商品やサービスを売買したり分配したりすることです。インターネットを利用してネットショップで商品の売買をおこなうことも電子商取引に含まれます。
特定商取引法
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。 具体的には、訪問販売や通信販売等において消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。
特定商取引法の類型において、ネットショップは【通信販売】に該当します。
特定商取引法の対象となる類型
- 訪問販売
- 通信販売
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引
- 特定継続的役務提供
- 業務提供誘引販売取引
- 訪問購入
【通信販売】 事業者が行う新聞、雑誌、インターネット上のホームページ(インターネット・オークションサイトを含む)などによる広告や、ダイレクトメール、チラシ等を見た消費者が、郵便や電話、ファクシミリ、インターネット等で購入の申込みを行う取引方法をいいます。 【電話勧誘販売】に該当するものを除きます。
通信販売の特定商取引法について
特定商取引法では、事業者に対して消費者への適正な情報提供等の観点から、各取引類型の特性に応じて、以下のような規制が行われています。
【通信販売】には次のような行政規制があります。
広告の表示(法第11条)
通信販売は、隔地者間の取引のため消費者にとって広告は唯一の情報です。そのため広告記載に虚偽や不記載事項があると問題が生じることがあります。そのため特定商取引法では、事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、販売価格、支払方法、商品の引渡し時期、その他広告に表示する事項を定めています。
誇大広告等の禁止(法第12条)
特定商取引法は、誇大広告や著しく事実と相違する内容の広告による消費者トラブルを未然に防止するため、 表示事項等について、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものより著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています。
未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止(法第12条の3、12条の4)
消費者があらかじめ承諾しない限り、事業者は電子メール広告を送信することを原則禁止しています。(オプトイン規制)
この規制は通信販売(提供)事業者のみならず、通信販売電子メール広告受託事業者も対象となります。
未承諾者に対するファクシミリ広告の提供の禁止(法第12条の5)
消費者があらかじめ承諾しない限り、事業者はファクシミリ広告を送信することを、原則禁止しています。(オプトイン規制)
前払式通信販売の承諾等の通知(法第13条)
消費者が商品の引渡し(権利の移転、役務の提供)を受ける前に、代金(対価)の全部あるいは一部を支払う「前払式」の通信販売の場合、事業者は代金を受け取りその後商品の引渡しに時間がかかるときには、その申込みの諾否の有無、代金(対価)を受け取る前の許諾の有無、その他の事項を記載した書面を渡さなければならない。
契約解除に伴う債務不履行の禁止(法第14条)
通信販売において売買契約の申込みの撤回等ができることから、契約当事者双方に原状回復義務が課された場合、事業者は代金返還など債務の履行を拒否したり、遅延したりすることを禁止します。
顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為の禁止(法第14条)
たとえばインターネット通販において、あるボタンをクリックすれば有料の申込みとなることを、消費者が容易に認識できるように表示していないこと。
申込みをする際、消費者が申込み内容を容易に確認し、かつ 訂正できるように措置していないことを「顧客の意に反して売買契約等の申込みをさせようとする行為」として禁止し、行政処分の対象としています。
具体的にどのようなケースがこれに該当するかは、 「インターネット通販における『意に反して契約の申込みをさせようとする行為』に係るガイドライン」 をご覧ください。
特定商取引法の民事ルール
特定商取引法では、行政規制だけでなく、「民事ルール」についても注意が必要です。民事ルールには次のような規制があります。
契約の申込みの撤回または契約の解除(法第15条の3)
通信販売の際、消費者が契約を申し込んだり、契約をしたりした場合でも、その契約にかかる商品の引渡し(特定権利の移転)を受けた日から数えて8日間以内であれば、消費者は事業者に対して、契約申込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができます。
ただし事業者が広告であらかじめ、この契約申込みの撤回や解除につき、特約を表示していた場合は、特約によります。
事業者の行為の差止請求(法第58条の19)
事業者が通信販売における広告について、不特定かつ多数の者に誇大広告などを行い、または行うおそれがあるときは、適格消費者団体は、事業者に対し、行為の停止もしくは予防、その他の必要な措置をとることを請求できます。
以上のように行政規制に違反した事業者は、業務改善の指示(法第14条)や業務停止命令(法第15条)、業務禁止命令(法第15条の2)などの行政処分のほか、罰則の対象となりますので注意してください。
「特定商取引法に基づく表記」について
ネットショップ運営者は「特定商取引法に基づく表記」記載必須!
特定商取引法で規定された内容を理解したうえで、ネットショップ運営者はショップサイトに「特定商取引法に基づく表記」という必要事項を記載したWebページを作成する必要があります。
「特定商取引法に基づく表記」には特定商取引法に基づく次のような記載項目があります。
【販売業者】
法人運営の場合は法人名、個人運営の場合は個人名を表示します。
【運営統括責任者名】
販売に関しての責任者名を表示します。法人は代表者名、個人は個人名を表示します。
【屋号またはサービス名】
ネットショップの名称を表示します。
【所在地】
本店(本社)の所在地、会社(法人)でない個人の場合は住所を表示します。
【電話番号】
ネットショップの連絡先電話番号を表示します。
【連絡先メールアドレス】
ネットショップの連絡先メールアドレスを表示します。
【商品代金以外の必要料金の説明】
商品代金以外にかかる料金(送料、消費税、手数料など)を全て表示します。
※クレジットカード決済の手数料は、購入者負担にできません。その旨を記載しないように注意してください。
送料を請求する場合は、具体的な金額を記載します。
【申込有効期限】
商品の申し込みの際、いつまでの申し込みが有効なのかを表示します。
また、品切れの場合の対応についても表示します。
【不良品】
不良品の場合、交換や返金の条件を表示します。
【販売数量】
商品の販売数量の制限など、特別な販売条件があるときは、その内容を表示します。
【引渡し時期】
後払いの場合は注文日より何日以内、前払いの場合は入金日より何日以内で発送できるかを表示します。
地域、条件により期間が異なる場合は、最長で何日以内かも表示します。
※クレジットカードは後払いです。
【支払方法】
代引き、銀行振込、クレジットカードなど、ネットショップで扱う決済方法を表示します。
【支払期限】
後払いの支払いは納品より何日以内、前払いの場合は注文日より何日以内かを表示します。
【返品期限】
納品日より、何日以内まで返品可能かを表示します。
「不良品以外返品不可」や「食品につき返品不可」、「開封後の商品は返品不可」など返品条件を表示します。
【返品送料】
返品の際、購入者側と販売者側のどちらが送料を負担するか表示します。
【資格・免許】
取扱商品に販売資格(免許)を必要とする場合は、その資格を表示します。
免許が必要ない商品のみ扱う場合、表示は不要です。
例:古物商、旅行業者代理業、酒類販売業
ネットショップで取扱う商品の許可・届出について
ネットショップで取扱う商品やサービス等によっては販売許可や届出、免許が必要です。
関連する法律や許可届出の内容は適時改正されることがありますので最新の情報を確認してください。
取扱商品、サービス提供に必要な許可や届出
取扱う商品サービス | 関連する法律 | 許可・届出等の内容 | 許認可の申請場所 |
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中古品の買取、販売 | 古物営業法 | 古物商許可 | 所轄の警察 生活安全課 |
オークション運営 | 古物営業法 | 古物市場主許可申請古物競りあっせん業の届出 | 所轄の警察 生活安全課 |
食品の製造、販売 | 食品衛生法 | 食品衛生法に基づく営業許可、届出 | 所轄の保健所 |
健康食品の販売 | 食品衛生法 医薬品医療機器等法 薬機法 ※種類による | 医薬品医療機器等法に基づく許可 ※種類による | 所轄の保健所・各都道府県の薬務課 ※種類による |
インターネットによる一般用医薬品販売 (特定販売) | 薬事法薬剤師法 | 一般用医薬品のインターネット販売は、 許可を受けた薬局・薬店(店舗販売業)しか行えません。 | 所轄の保健所・各都道府県の薬務課 ※種類による |
酒類の販売 | 酒税法 | 通信販売酒類小売業免許 ※ネットショップで2つ以上の都道府県に販売する場合 | 所轄の税務署 |
化粧品の製造、販売 | 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 ※医薬品医療機器等法(略称) | 化粧品製造販売許可 化粧品製造業許可 | 所轄の保健所 各都道府県の薬務課 など |
ペットの販売 | 動物愛護管理法 | 動物取扱業の登録 第一種動物取扱業者(動物の販売、保管、貸出、訓練、展示、競りあっせん、譲受飼養を営利目的で業として行う者) | 管轄の都道府県又は政令市の動物愛護管理行政担当部局 |
中古品の買取、販売
シャネル、プラダ、コーチヴィトン、ロレックスなどのブランド品や、ダイヤ、真珠など宝飾品、自動車、自動二輪車(バイク)、パソコン、機器工具、家電、書籍、CD、DVD、衣料、美術品、骨董品などの各種中古品の買取り、販売を業とする場合「古物商許可」が必要です。
また古物市場(業者オークション)への参加、売買は「古物商許可」を取得した古物営業を業とする個人または法人だけが参加できます。また、オークション(古物市場)を運営する場合、「古物市場主許可申請」、「古物競りあっせん業の届出」などが必要です。
【参考】
古物商許可(古物商許可証)簡単取得ガイド! ブランド品も激安仕入れ可能、業者オークション(古物市場)へ参加するには「古物商許可」が必須
古物市場(業者オークション)の探し方・古物市場リスト入手方法! ブランド品・宝石・貴金属・時計・パソコン・自動車など、激安仕入れ先の見つけ方
食品の製造、販売
食品の製造、販売をおこなう場合、スイーツやパンなどを製造して販売したり、食肉や魚介類など仕入れた食品を再加工して販売するなど、その他食品の加工、製造、販売を行うには食品衛生法に関連する許可や、行政が定める基準に合致した設備や施設を設置する必要がありますので、必ず事前に所轄の保健所に相談しましょう。
健康食品の販売
薬機法で規制される商品は、「医薬品」、「医薬部外品」、「化粧品」、「医療機器及び再生医療等製品」の5種であり健康食品は直接薬機法で制限を受けるものではありませんが、「医薬品のような効能を標ぼうする」、「医薬品にしか使えない成分を使う」など薬機法に抵触する行為は薬機法違反となります。
健康食品はあくまでも栄養成分を補給する商品、または普通よりも健康に良いとして販売される商品です。虚偽表示、誇大広告など問題となる行為を行わないよう注意してください。
インターネットによる一般用医薬品販売
インターネットによる一般用医薬品販売(特定販売)の基本的ルールとして、一般用医薬品のインターネット販売は、許可を受けた薬局・薬店(店舗販売業)しか行うことができません。また実際の店舗に貯蔵・陳列している製品しか販売できません。
インターネット販売を行う際は、保健所へ事前の届出が必要です。
【参考】
医薬品の販売制度 |厚生労働省
酒類の販売
ネットショップ(2つ以上の都道府県に販売する場合)で酒類の販売業を行う場合、酒税法に基づいた「通信販売酒類小売業免許」が必要です。
通販販売酒類小売業免許で取扱いできるのは、国産の酒類に関して年間の販売量が酒類品目ごとで3,000キロリットル未満の規模の小さい「蔵元(酒類製造業者)」が製造・販売している種類に限られます。
【参考】
お酒に関する情報|国税庁
化粧品の製造、販売
医薬品医療機器等法(略称)における化粧品の定義は、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう」とあります。
化粧品は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称:医薬品医療機器等法)」で規制されており、国内で製造した物や海外から輸入した物を化粧品として、国内の市場へ出荷するためには、化粧品製造販売業許可や化粧品製造業許可の取得等が必要です。なお、国内の化粧品製造販売業者により既に市場流通されている製品の販売のみ行う場合は、製造販売業等の許可は不要です。
化粧品製造販売業許可:
化粧品を国内市場に元売りするための許可。許可を受けた製造販売業者は製造販売する製品の品質や安全性を確保する責任を負います。
化粧品製造業許可:
化粧品を製造するための許可
【参考】
医薬品・医療機器 |厚生労働省
ペットの販売
動物愛護管理法は、動物に対する虐待を防ぎ、動物を愛護することを通じて命を大切にする心豊かな社会を築くことを目的としたものです。飼い主の責任や危険な動物の飼養規制だけでなく、動物取扱業者による適正な取扱いの推進等を目的としており、動物取扱業者に係る規制も強化されています。
ペットショップやブリーダー、ペットホテルなどを営む動物取扱業者は、都道府県知事や政令市長への登録が必要です。
第一種動物取扱業者のうち、犬又は猫の販売や販売のための繁殖を行う者については、「犬猫等販売業者」として犬猫等健康安全計画の策定とその遵守、獣医師との連携の確保など追加の義務が課せられます。
登録は店舗など事業所ごとに行いますが、ひとつの店舗で「販売」と「保管」など複数業種を実施する場合は、その業種ごとに登録する必要があります。