Googleアナリティクスは、無料(有料版も有り)で利用できる高機能なアクセス解析ツールです。
2005年からサービスが開始され、以後Webマーケティングの進歩にともない、Googleアナリティクスも幾度かのバージョンアップを繰り返してきました。
2014年には「Googleアナリティクス ユニバーサルアナリティクス」として大幅なバージョンアップ版が正式リリースされました。
高機能なアクセス解析ツールを無料で利用できるということもあり、Googleアナリティクスは世界中で利用されています。
しかし、機能の多さや専門的用語など、むつかしいと思われる部分も多いのではないでしょうか。
その理由の一つに、Googleアナリティクスのようなアクセス解析ツールを導入するとき、ツールの利用方法に関心が集中してしまい、マーケティングによる思考、観点を忘れているからではないでしょうか。
ツールの習熟も大切ですが、「木を見て森を見ず」のことわざのように、Googleアナリティクスのようなアクセス解析ツールを導入、利用するために、知って得するサイト分析、改善のために重要な「目標(ゴール)の設定」についてご説明します。
そもそも、Googleアナリティクスのようなアクセス解析ツールは、なぜ必要なのでしょうか。
生活環境の変化の1つに、インターネットの普及拡大があります。
- インターネットの高速通信インフラの拡大で世界中の情報を誰でも簡単に利用できるようになった。
- スマートフォンなどのモバイル機器の普及で、幅広い年代層に個人単位で24時間接続可能な環境が安価で利用できるようになった。
- クラウドコンピューティング技術の発達により、大量のデータを解析処理できる高機能な処理能力を安価に利用できるようになった。
これにともない、インターネットを利用するユーザーの行動も大きく変化しました。
インターネットを利用したデバイス機器やアプリ、サービスなどの関連技術は拡大中で、インターネットは仕事や私生活において、欠かせないツールとなり、インターネット利用ユーザーは、PCやスマートフォン、タブレットなど一人で複数のデバイス機器を利用して、時と場所を選ばず、自分の生活スタイルに合わせて24時間好きな時に、必要な情報やサービス(価格比較サイト・ソーシャルサイト・レビューサイト・専門家の情報サイト・マッチングサイト・キュレーションサイト等々)にアクセスできる環境を手にいれました。
WebサイトやECサイト(ネットショップ)などインターネットを利用したビジネスを行う側も、ユーザー行動の変化に対応する、マーケティング上の様々な問題点を抽出し改善できる能力が必要になってきました。
この大量データ、多種多様なユーザーの行動を分析するために、Googleアナリティクス(ユニバーサルアナリティクス)などの高機能な解析ツールが役立ちます。
しかし、解析ツールは、あくまでも問題点を抽出し、問題の解決(改善)を手助けする道具でしかありません。
いくら道具が高性能な機能を有していても、利用者の使い方が間違っていると、的外れな答えを導き出し、良くない結果を導いてしまうことになります。
「目標(ゴール)」設定の重要性について
Googleアナリティクスの基本的な運用プロセスは、「測定」・「レポート」・「分析」・「テスト」・「改善」になります。
●測定(Measure)
プロセスの起点は測定
目標(ゴール)を達成するため、問題点を解決するデータ収集段階
●レポート(Report)
データを解釈可能な形式にまとめる
目標(ゴール)の結果に対する改善策や目標の設定変更など、改善に必要な情報(収集データ・分析データ)を一覧表やグラフなど、分かりやすくレポートにして提供
Googleアナリティクスの「ダッシュボード」画面でのレポート表示やPDFファイル形式での出力、Eメール(PDFファイル添付)でレポート送信可能
●分析(Analyze)
大きなトレンドの確認など(単純分析)、
詳細データのセグメント化
業界のベンチマーク(比較・指標)による競合状況分析など(複雑分析)
分析の本質=期待に基づく仮説の構築
(実際の指標(値)がそれに一致する理由や、しない理由を検討する)
データに予想外の動きがあった場合、原因解明に役立つのが分析
データをCSVファイル形式やExcelファイル形式などで出力、Eメールでデータ(CSVなどのファイル添付)送信可能なので、Excelやその他システムにてデータ分析など2次加工して利用可能
●テスト(Test)
分析で見つかった課題に対して、様々な解決策をテストする
意思決定プロセスから主観を取り除き、改善機会を見つけるにはテストが重要
●改善(Improve)
プロセスを通して得た知識を、再利用して改善する
プロセスを回転させ、改善をおこなう
インターネットを利用したユーザーの一般的な「消費行動プロセス」モデルとして「AIDMA(アイドマ)」や「AISAS(アイサス)」があります。
AIDMA(アイドマ) | |
---|---|
Attention(注意):何となく商品やサービスが気になる ↓ Interest(関心):興味が湧いてくる ↓ Desire(欲望):商品がほしい気持ちが強くなる ↓ Memory(記憶):具体的な商品やサービスを認識する ↓ Action(行動・購買):購入やサービス契約する |
AISAS(アイサス) | |
---|---|
Attention(注意):何となく商品やサービスが気になる ↓ Interest(関心):興味が湧いてくる ↓ Search(検索・比較):具体的な商品やサービス内容の調査・比較 ↓ MAction(行動・購買):購入やサービス契約する ↓ Share(情報の共有):SNSや口コミサイトなどへの情報提供 |
このような、「AIDMA」や「AISAS」における消費者行動のプロセスを、マーケティングの「目標達成プロセス」として、ユーザー(消費者)との接点を、段階別に捉えると次のようなプロセスになります。
主導権はユーザー(消費者)にある
インターネットを利用するユーザー(消費者)の行動は、自由で幅広い選択肢を持っており、ユーザー(消費者)の購入プロセスの起点は様々で、「AIDMA」や「AISAS」における消費者行動プロセスのような、直線的「目標達成プロセス」モデルだけでは、対応することが難しくなっています。
「量的データ」と「質的データ」について
Googleアナリティクスなどの解析ツールは長年、Webサイトの「量的データ」収集が主な役割でした。
しかし、ECサイト(ネットショップ)などでは、最終的に商品の購入やサービスの申込みなど、ビジネス目標を達成するためにショップに訪れた「ユーザーの数」だけでなく、「どのような人が」「どこからきて」「何をみたのか」「何をしたのか」「なぜ途中でサイトを離脱したか」など、問題点を抽出(測定)し分析、改善するために、質的データの収集をおこなう必要があります。
「目標(ゴール)」の達成(結果)ポイントを明確にする
Googleアナリティクスを利用するうえで重要なポイントに、「目標(ゴール)」設定があります。
設定した目標が達成されると、ゴールとなり具体的な値(指標)として結果(データ)を得られなければなりません。
これが決まっていないと、改善に必要とするデータ収集が出来ず、効果的な分析や改善につなげることができません。
Eコマースサイトの場合ネットショップ・レンタルサーバー・Eラーニング・その他 | |
---|---|
目標(ゴール)例 商品の購入・各種サービス申込み・契約・その他 具体例 自社のサイトに関するマルチデバイス間でのユーザー行動、動線を分析し、ユーザビリティの見直し改善を行い、売上を向上させたい |
コンテンツ提供サイトの場合動画・音楽・ゲーム・アプリ・電子書籍・その他 | |
---|---|
目標(ゴール)例 コンテンツ利用(無料、有料)・ダウンロード(無料、有料)・会員登録・購入・契約・リピータ促進・その他 具体例 A/BテストやLP(ランディングページ)のコンテンツや機能の改善を行い、メインサイトの会員登録ページへのアクセスを促進し、会員登録数を増やしたい |
情報サイトやサポートサイトの場合法律・金融・各種専門技術情報・各種サポート・その他 | |
---|---|
目標(ゴール)例 ユーザーが必要とする専門情報の提供・コンサルティング契約・サポート情報の提供、サポート契約・その他 具体例 Webアクセスを分析することでWeb広告への投資対効果を分析し、効果的なキーワードの抽出、広告費の配分見直し等を行い、提供する情報やサービス属性にマッチしたユーザーのアクセスを増やし、契約アップしたい |
営業案件獲得サイトの場合マッチング・見積比較・資料請求・その他 | |
---|---|
目標(ゴール)例 見込み客や顧客のリスト収集・商談コンタクト・契約・会員登録・その他 具体例 ユーザビリティやユーザーエクスペリエンスの見直し、Webサイトのパフォーマンスチューニングを行い、提供するビジネスに興味を持つお客とのコンタクトを増やしたい(クロージング率アップ) |
ブランディングサイトの場合商品やサービス、それらを供給する企業や団体、人物・建築物・史跡・地域・祭事などあらゆるものを対象にしたブランディングサイト | |
---|---|
目標(ゴール)例 認知度向上・エンゲージメント促進・顧客維持・その他 具体例 サイトのアクセス分析を行い、提供するブランド商品やサービスに対するユーザーの嗜好を分析して、サイトコンテンツの改善、アクセシビリティやユーザビリティの改善を行い、サイトアクセス、リピータを増やしたい |
設定する目標は1つとは限らず、ある目標(ゴール)達成データをもとに、新たな目標(ゴール)を設定したり、測定プロセスにおいて複数の目標(ゴール)を設定する場合もあります。
これらの目標設定例とは異なる業態においても、データの分析、改善に効果的な目標(ゴール)設定(検討)を行いGoogleアナリティクスによる測定計画を立案しましょう。
効果的な測定をおこなうためには、ユーザーの行動データが十分得られるように「マクロ」と「マイクロ」2つのコンバージョンを測定することが重要です。
コンバージョン(Conversion)とは、WebサイトやECサイト(ネットショップ)などにおいて、資料請求、見積依頼、商品購入や会員登録など、何らかの目標(ゴール)を達成することです。
たとえば、ECサイト(ネットショップ)において、目標(ゴール)を「商品の購入」としている場合の「マクロ」コンバージョンと「マイクロ」コンバージョンの違いは次のようになります。
「マクロ」コンバージョン(Macro Conversion)
ECサイト(ネットショップ)で商品ページを見て気に入ったので、ショッピングカートをクリックして商品を購入した。
このように商品購入という直接行動で目標(ゴール)を達成するような、ユーザーの行動を「マクロ」コンバージョンといいます。
「マイクロ」コンバージョン(Micro Conversion)
ネットショップからのメールマガジン(Eメール)のキャンペーン情報に興味を持ち、リンクをクリックして、ECサイト(ネットショップ)のキャンペーン情報ページから商品を購入した。
ここでは、メールマガジンのキャンペーン情報リンクからキャンペーンページにアクセスするという1つの目標(ゴール)を達成しています。
続いてアクセスしたキャンペーンページ(ネットショップ)から商品購入という目標(ゴール)を達成しました。
このように直接行動で商品購入という目標(ゴール)を達成するのではなく、商品購入という目標(ゴール)につながる、1つ又は複数のアシスト的な目標(ゴール)のことを「マイクロ」コンバージョンといいます。
このように、Googleアナリティクスでは「商品購入」という直接行動での目標(ゴール)達成データも含め、設定によっては、いくつものアシスト的(マイクロコンバージョン)な目標(ゴール)達成ポイントのデータも収集できます。
「マクロ」コンバージョンと「マイクロ」コンバージョンの違いを理解したうえで収集したデータの分析、改善に役立てましょう。
さまざまなユーザー行動の、継続的に収集したデータは、設定した目標(ゴール)に対する改善プロセスの原動力になります。
しかし、「目標(ゴール)」設定が適正におこなわれていないと、「測定」→「レポート」→「分析」→「テスト」→「改善」というGoogleアナリティクス(解析ツール)の運用プロセスが、うまく回転しません。
これから「Googleアナリティクス」を導入しようと検討している方、導入したけど今一つ使い方がわからないと感じておられる方、「目標(ゴール)」の重要性を理解し、適正な「目標(ゴール)」かどうかチェックしてみてください。
Googleアナリティクス(ユニバーサルアナリティクス)の主な特徴
- 1つのアカウントで複数サイトの分析が可能(UserIDによる複数のデバイス、セッション、エンゲージメントデータとの結び付けなど)
- マルチデバイス間でのユーザーの行動分析が可能(新しいトラッキングコードによるマルチデジタルデバイスからのデータ収集など)
- アクセス情報やユーザー属性を細分化した分析が可能(カスタムディメンションやカスタム指標を作成してビジネス固有のデータ収集、セグメント化、セグメントを利用した分析、設定オプションの合理化など)
- eコマース(ネットショップ)のショッピング行動や購入行動、経済動向、マーケティング効果の分析が可能(コンバージョン率と平均注文額、キャンペーンの掲載結果、購入プロセスの成果、決済プロセスの成果、商品販売状況、商品リストの販売状況など)
- 各種レポートの作成・出力が可能(マイレポートやカスタムレポートの作成、管理、PDFファイルやCSVファイルによる出力、レポートの共有など)
- GoogleアナリティクスのAPIを利用した計測やレポートデータの取得(Collection API:トラッキングコードのカスタマイズ・Management API:ユーザー特定のビューセットを効率よく取得・Data Export API:ビューにレポート単位のデータをリクエストや選択したビューのカスタマイズデータレポートを取得など)
- 広告向け機能(AdWordsと連携した広告による集客分析、リスティング広告のキャンペーンやキーワード出稿時のチューニング利用など)
●Googleアナリティクス有料版(プレミアム)
1か月あたり上限のヒット数が、10億~数10億規模のヒット数を処理できる大規模サイト向けの有料版(130万円/月から)です。
●Googleアナリティクス無料版(スタンダード)
1か月あたりの上限ヒット数は「1000万ヒット」です。
中小規模サイトで利用する場合、無料版(スタンダード)のGoogleアナリティクスで問題ないでしょう。
無料版(スタンダード)と有料版(プレミアム)の詳しい仕様については、「Google アナリティクスが提供するサポート」比較一覧ページをご参照ください。
●Googleアナリティクス360スイート(Analytics 360 Suite)有料版
2016年3月にアナウンスによると、「Googleアナリティクス360スイート」は、マルチスクリーン時代における企業のマーケッターニーズに応えるために設計された、データ統合とマーケティング分析の製品群です。
Googleアナリティクス360スイート(ベータ版含む)の内容
- Google アナリティクス 360(旧 Google アナリティクスプレミアム)
- Google タグマネージャ 360
- Google オプティマイズ 360
- Google アトリビューション 360
- Google オーディエンスセンター 360
- Google データスタジオ 360